パワハラで金銭横領の冤罪をでっち上げられた時の対応法と相談先

パワハラで金銭横領の冤罪をでっち上げられた時の対応法と相談先 パワーハラスメント

職場で突然「お金を盗んだ」と言われたら——。
それがパワハラを目的としたでっち上げであれば、あなたは複数の法的救済手段を同時に行使できる立場にあります。
本記事では、冤罪・名誉毀損・警察対応・弁護士相談まで、24時間以内の初動から法的手続きの完結までを実務レベルで解説します。


目次

  1. この問題に複合する違法行為と根拠法令
  2. 24時間以内の初期対応(優先度順)
  3. 証拠収集の具体的手順
  4. 会社・加害者への法的対抗手段
  5. 警察への対応と被害届の出し方
  6. 弁護士・相談窓口の選び方と費用
  7. 解雇・懲戒処分を受けた場合の対処法
  8. よくある質問(FAQ)

1. この問題に複合する違法行為と根拠法令

「金銭を横領した」というでっち上げは、単なるパワハラにとどまりません。
複数の違法行為が同時に発生しているため、それぞれに対応した法的手段が使えます。

行為 根拠法令 責任主体 具体的内容
パワハラ 労働施策総合推進法30条の2/民法709条 会社・加害者 職務上の権力を使った精神的苦痛の付与
名誉毀損 刑法230条/民法709条・710条 加害者・会社 虚偽の事実を公表し社会的評価を下げる
虚偽告訴 刑法172条(虚偽告訴罪) 加害者 刑事罰を受けさせる目的での虚偽申告
懲戒権の濫用 労働契約法15条 会社 根拠のない懲戒解雇・降格・減給
不法行為 民法709条・715条 加害者・会社(使用者責任) 精神的損害・財産的損害の賠償義務

▼ 救済ルートのイメージ

でっち上げ冤罪の被害
  │
  ├─【民事】損害賠償請求(慰謝料・逸失利益)
  │     └─ 名誉毀損/不法行為/使用者責任
  │
  ├─【刑事】警察への告訴
  │     └─ 名誉毀損罪(刑法230条)
  │       虚偽告訴罪(刑法172条)
  │
  └─【労働】不当解雇の無効・地位確認
          └─ 労働審判/労働委員会/訴訟

ポイント: 民事・刑事・労働の3つの手続きは同時進行が可能です。どれか1つだけではなく、状況に応じて複数を組み合わせることで交渉力が飛躍的に高まります。


2. 24時間以内の初期対応(優先度順)

冤罪に対する対応の巧拙は、最初の24時間で8割が決まると言っても過言ではありません。
感情的に動くと「問題社員」のレッテルを貼られるリスクがあります。以下の手順を冷静に実行してください。

✅ STEP 1|その場での対応(言ってよいこと・ダメなこと)

言ってよいこと
– 「事実と異なります」「誤解です」と短く一言明示する
– 「弁護士に相談してから詳しくお答えします」
– 「調査には協力します。ただし不当な聴取には応じません」

やってはいけないこと
– 感情的に怒鳴り返す(録音・記録に残り不利になる)
– 詳細な言い訳を次々に話す(矛盾を突かれる材料になる)
– 会社が用意した「始末書」「反省文」「事実確認書」に署名・押印する(強く拒否)

⚠️ 重要: 署名・押印を迫られても「内容を確認したうえで弁護士と協議してから回答します」と答えれば問題ありません。法的にその場での署名義務はありません。


✅ STEP 2|当日中に記録する(時系列メモ)

手書きノートとスマートフォンの両方で、以下を記録してください。

【記録テンプレート】
──────────────────────────────
日時:○年○月○日 ○時○分
場所:○○社 ○○部 会議室
発言者:上司 △△(役職:○○)
内容:「お前が○○円を横領しただろう」と言われた
同席者:同僚 □□(部署:△△部)
自分の対応:「事実と異なります」と回答した
──────────────────────────────

保存場所: スマートフォンのメモアプリ→クラウド同期(GoogleドライブやiCloud)→自宅のPCにもコピー。3箇所以上に分散保存することが重要です。


✅ STEP 3|信頼できる第三者に連絡する

その日のうちに、家族や信頼できる友人に電話で状況を伝えておくことをおすすめします。
「○月○日○時に、上司から横領を疑われた」と話した事実が、後に証人証言の裏付けとして機能します。


3. 証拠収集の具体的手順

冤罪に対抗するには証拠が命です。「ある」と思っていた証拠が後で使えない、ということを防ぐため、以下の収集方法を確認してください。

3-1 収集すべき証拠の一覧

証拠の種類 具体例 収集方法
録音データ 上司・会社からの冤罪告知の音声 スマートフォンの録音アプリ(合法)
メール・チャット 冤罪に関する業務連絡、パワハラ発言のログ スクリーンショット+PDF保存
書面類 始末書の要求書・懲戒通知書・調査結果文書 コピーを自宅に保管
勤怠・業務記録 問題の日時に業務をしていた記録 勤怠システムのスクリーンショット
金銭管理記録 金庫の管理ルール・アクセス権限記録 IT部門の記録・内部規程のコピー
目撃者情報 冤罪告知の場に居合わせた人物 氏名と連絡先をメモ(後から確認)
医療記録 ストレスによるうつ・不眠等の診断書 内科・心療内科を受診して取得

3-2 録音に関する法的根拠

自分が会話の当事者である場合の録音は合法です(最高裁昭和51年5月25日判決参照)。第三者の会話を無断で録音する場合は違法になる可能性があるため注意してください。

3-3 デジタル証拠の改ざんを防ぐ方法

  • 録音ファイルは作成日時のメタデータが変わる前にクラウドへアップロード
  • メールはPDF形式でエクスポートし、ファイル名に日付を入れて保存
  • スクリーンショットは撮影後すぐに外部ストレージ(USBメモリ等)にバックアップ

4. 会社・加害者への法的対抗手段

4-1 内容証明郵便による抗議

まず会社・加害者に対して内容証明郵便で以下を通知します。

【内容証明に記載すべき事項】
1. 冤罪告知の事実(日時・内容・発言者)
2. 事実が虚偽であることの明示
3. 名誉毀損(民法709条・刑法230条)への該当
4. 謝罪・訂正・損害賠償を求める旨
5. 回答期限(通常2週間〜1か月)

内容証明郵便は郵便局で発行でき、送付した事実と内容が公的に証明されます。弁護士に依頼すると信頼性が格段に上がります。

4-2 民事損害賠償請求

名誉毀損・不法行為(民法709条・710条)・使用者責任(民法715条)を根拠に、以下の損害を請求できます。

  • 慰謝料:精神的苦痛に対する補償(数十万〜数百万円)
  • 逸失利益:不当解雇・降格による給与損失
  • 弁護士費用:認容額の10~15%程度が相場

4-3 労働審判・民事訴訟

解雇・懲戒処分を受けた場合、地方裁判所への労働審判申立てが有効です。

手続き 特徴 期間の目安
労働審判 3回以内の期日で解決。費用が低い 3~6か月
民事訴訟 判決力が強い。時間がかかる 1~3年
仮処分(地位保全) 解雇の効力を仮に止める 2~3か月

5. 警察への対応と被害届の出し方

5-1 会社が先に警察に被害届を出した場合

会社が「横領」として警察に届け出る可能性があります。この場合、以下に注意してください。

✅ すべきこと
任意同行の要請には応じる前に弁護士へ連絡(電話1本で構わない)
– 取調べには「弁護士が来るまで話しません」と伝える権利がある
– 黙秘権(憲法38条1項)は「自分に不利な供述を強要されない権利」として行使可能

❌ やってはいけないこと
– 警察での取調べ中に感情的に否定だけ繰り返す
– 弁護士なしで調書に署名する

5-2 あなたが加害者を告訴する場合

名誉毀損罪(刑法230条)・虚偽告訴罪(刑法172条)として、加害者を警察に告訴することができます。

【告訴状に必要な記載事項】
1. 告訴人(あなた)の氏名・住所
2. 被告訴人(加害者)の氏名・所属
3. 告訴の趣旨(何の罪で告訴するか)
4. 犯罪事実(いつ・どこで・何をされたか)
5. 証拠の概要
6. 処罰を求める旨

告訴状は警察署の刑事課に提出します。受理されない場合は検察庁への告訴も可能です(刑事訴訟法246条)。弁護士が作成・同行すると受理率が上がります。


6. 弁護士・相談窓口の選び方と費用

6-1 まず無料で使える相談窓口

相談先 特徴 連絡先・方法
労働基準監督署 解雇・賃金問題の行政窓口 最寄りの労基署(厚生労働省HP参照)
総合労働相談コーナー 総合的な労働相談(無料・予約不要) 各都道府県労働局
法テラス(日本司法支援センター) 弁護士費用の立替制度あり 0570-078374
弁護士会の法律相談 30分5,500円程度(初回無料の場合も) 各都道府県弁護士会
労働問題に強い労働組合 交渉・団体交渉のサポート ユニオン(合同労組)に加入

6-2 弁護士費用の目安

業務内容 費用の目安
初回法律相談 無料~1万1,000円(1時間)
内容証明郵便の作成 3万~5万円
労働審判申立て 着手金20万~40万円+成功報酬
刑事告訴(告訴状作成) 10万~30万円
民事訴訟 着手金30万~60万円+成功報酬

費用が払えない場合: 法テラスの「審査なし」の無料相談と、収入要件を満たせば弁護士費用の立替払い制度(民事法律扶助)を利用できます。

6-3 弁護士選びのポイント

  • 「労働問題」「労働事件」の実績が明示されているか
  • 「パワハラ」「冤罪対応」の相談実績があるか
  • 初回相談を無料で行っているか(費用負担なく複数事務所を比較できる)
  • セカンドオピニオンを嫌がらない事務所か

7. 解雇・懲戒処分を受けた場合の対処法

7-1 解雇通知書を受け取ったら

□ 解雇通知書のコピーをその場で要求する(労基法20条の通知義務)
□ 「解雇理由証明書」の発行を書面で請求する(労基法22条)
□ 解雇予告手当(30日未満の予告には賃金30日分)の支払いを確認
□ 離職票の「会社都合退職」への訂正を後から求める準備をする

7-2 解雇の無効を争う手段

労働契約法16条: 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」

横領の冤罪によるでっち上げ解雇は、この「客観的合理的理由」がなく、解雇無効を主張できる典型的なケースです。

手続き タイムリミット 対応内容
地位保全の仮処分 解雇後できるだけ早く 解雇効力を仮に停止し給与の仮払いを求める
労働審判 申立自体に期限はないが早期推奨 解雇無効・給与未払い分の支払い
ハローワークへの申告 離職票受取後すぐ 「会社都合退職」への変更・給付制限なしの失業給付

8. よくある質問(FAQ)

Q1. 録音なしでも冤罪を証明できますか?

A. 証明できます。メール・チャットの履歴、目撃者の証言、金銭管理記録のアクセスログなど、録音以外の証拠でも十分に立証が可能です。ただし録音があれば証拠力は格段に高まります。今後の会話はできるだけ録音することをおすすめします。


Q2. 会社内部でのでっち上げでも、警察は動いてくれますか?

A. 動いてもらえる可能性はあります。名誉毀損罪(刑法230条)は「親告罪」(被害者の告訴が必要)ですが、虚偽の告訴・告発を行った場合は虚偽告訴罪(刑法172条)の成立も検討されます。証拠が揃っていると警察も動きやすくなります。弁護士と一緒に告訴状を持参することを強くおすすめします。


Q3. でっち上げが社内で広まった場合、名誉毀損になりますか?

A. なります。刑法230条の名誉毀損は「公然と事実を摘示」した場合に成立し、会議や社内連絡での発言も「公然性」を満たします。特に複数の従業員がいる場で告知した場合は、民事の損害賠償請求においても慰謝料が増額される可能性があります。


Q4. すでに退職してしまった後でも請求できますか?

A. 請求できます。不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は「損害及び加害者を知った時から3年」(民法724条)です。退職後でも名誉毀損・パワハラの損害賠償を請求する権利は時効内であれば有効です。ただし証拠が散逸する前に早めに動くことが重要です。


Q5. 弁護士費用が払えない場合はどうすれば?

A. 法テラスの民事法律扶助制度を利用することで、弁護士費用の立替払い(月々分割返済)が可能です。収入・資産が一定基準以下であれば利用できます。まず法テラスの審査相談(0570-078374)に電話してください。審査は無料です。


Q6. 会社が「内部調査中」と言って解雇しない場合、どうすればよいですか?

A. 調査中であっても、以下の権利を主張できます。①調査の具体的内容・期限の開示を求める、②不当な自宅待機命令には賃金の全額支払いを請求できる(民法536条2項)、③調査が長期化する場合は弁護士を通じて是正を求める内容証明を送る。「調査中」を盾にした無期限の待機命令は、それ自体がハラスメントに該当する場合もあります。


まとめ:行動チェックリスト

でっち上げ冤罪に直面したとき、時間が経つほど証拠は消え、会社側の準備は整います。以下のチェックリストをそのまま実行してください。

【今日中にやること】
□ 発言内容・日時・場所・同席者を記録する
□ 始末書・確認書への署名を拒否する
□ 録音データ・メール・書面類を確保する
□ 信頼できる家族・友人に連絡する

【3日以内にやること】
□ 労働基準監督署または総合労働相談コーナーへ相談
□ 弁護士への初回相談(無料相談を活用)
□ 医師を受診し診断書を取得しておく

【1週間以内にやること】
□ 内容証明郵便の発送(弁護士依頼が望ましい)
□ 名誉毀損・虚偽告訴の告訴状の作成を開始
□ 解雇通知を受けた場合は解雇理由証明書を請求

本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的なケースについては、必ず弁護士にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 会社から金銭横領の冤罪をでっち上げられました。その場で何と言うべき?
A. 「事実と異なります」と短く明示し、詳細は弁護士に相談してから回答すると伝えてください。感情的な反論や詳細な言い訳は避けましょう。

Q. 始末書や事実確認書に署名を迫られたら?
A. 内容確認と弁護士協議が必要と答えて、署名・押印を拒否してください。法的にはその場での署名義務はありません。

Q. でっち上げ冤罪では、どのような法的救済を受けられる?
A. 民事損害賠償請求(名誉毀損・不法行為)、刑事告訴(名誉毀損罪・虚偽告訴罪)、労働審判による不当解雇無効化が可能です。複数同時進行できます。

Q. 警察に被害届を出すメリットは?
A. 虚偽告訴罪や名誉毀損罪として加害者を刑事罰の対象にでき、民事交渉での交渉力が大幅に向上します。

Q. 初期対応で最も重要なことは何?
A. 24時間以内に時系列メモを複数箇所に保存し、信頼できる第三者に状況を報告することです。証拠と証人確保が後の法的対抗の基盤になります。

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