即日解雇の予告手当「30日分給与」を完全計算・請求ガイド

即日解雇の予告手当「30日分給与」を完全計算・請求ガイド 不当解雇

突然「今日付けで解雇」と告げられた――そんな状況でも、あなたには30日分の給与(解雇予告手当)を受け取る法的権利があります。

本記事では、即日解雇された場合の予告手当の計算式から請求手順、内容証明郵便の書き方まで、今日から実践できる形で完全解説します。


目次

  1. 即日解雇で30日分給与がもらえる法的理由
  2. 30日分給与の計算方法【3つのステップ】
  3. 証拠収集と準備:請求前にやるべきこと
  4. 解雇予告手当の請求手順【4ステップ】
  5. 内容証明郵便の書き方テンプレート
  6. 請求が通らないケースと対処法
  7. FAQ

即日解雇で30日分給与がもらえる法的理由

解雇予告手当とは何か

解雇予告手当とは、使用者(会社)が労働者を即日解雇した際に支払う義務がある法定給付金です。

普段の月給・時給とはまったく別の性質を持ちます。

項目 月給・時給 解雇予告手当
性質 労働の対価 予告義務の代償
根拠 雇用契約 労働基準法20条
発生条件 労働の提供 予告なし解雇の事実
同時請求 ✅ 可能 ✅ 可能

ポイント: 最後の給与とは別に、予告手当を請求する権利があります。「給与は払ったから終わり」は会社側の誤りです。


労働基準法20条の要件

労働基準法第20条第1項は、使用者に対して次の義務を課しています。

「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」

つまり会社が選べる選択肢は以下の3つだけです。

【使用者の3つの選択肢】

A. 30日以上前に解雇予告する
   → 予告手当の支払いは不要

B. 予告期間を一部設ける(例:10日前に予告)
   → 不足の20日分の平均賃金を支払う義務

C. 予告なしで即日解雇する(← あなたの状況)
   → 30日分以上の平均賃金を全額支払う義務

「今日付けで辞めてくれ」と言われた場合はCに該当し、30日分全額の請求権が発生します。


解雇の有効性とは無関係に請求可能

これは多くの労働者が知らない重要な法原則です。

解雇予告手当の請求権は、解雇の正当性・有効性とは完全に独立しています。

  • ✅ 正当な理由がある解雇でも → 請求できる
  • ✅ 不当解雇でも → 請求できる
  • ✅ 懲戒解雇であっても → 原則として請求できる(※後述の例外あり)
  • ✅ 試用期間中でも(14日以上勤務していれば)→ 請求できる

重要: 「解雇は正当だったのだから予告手当は払わない」という会社の主張は、法律上通りません。予告手当は労働基準法が定めた強行規定であり、会社が拒否できないものです。


30日分給与の計算方法【3つのステップ】

予告手当の金額は「30日分の平均賃金」で計算します。月給の単純な1か月分ではなく、労働基準法第12条に基づく「平均賃金」を使う点が重要です。


ステップ1:1日分の平均賃金を算出する

計算式(基本):

1日分の平均賃金 = 過去3か月の賃金総額 ÷ 過去3か月の暦日数

具体例(月給制・月給25万円の場合):

【条件】
・解雇日:10月15日
・対象期間:7月15日〜10月14日(3か月)
・7月:31日、8月:31日、9月:30日 → 合計92日
・各月の給与:250,000円 × 3か月 = 750,000円

【計算】
1日分の平均賃金 = 750,000円 ÷ 92日 = 約8,152円

時給制・日給制の場合:

労働基準法12条では、時給・日給制の場合に「最低保証額」の計算も必要です。

最低保証額 = 過去3か月の賃金総額 ÷ 実労働日数 × 0.6

→ 上記の基本計算式と比較して、高い方を採用する

賃金総額に含めるもの・含めないもの:

含める ✅ 含めない ❌
基本給 賞与(臨時)
残業代 結婚祝金など臨時手当
各種手当(固定) 通勤費(実費弁償的なもの)
家族手当 3か月を超える期間ごとの手当

ステップ2:不足する予告日数を確認する

次に「何日分」請求できるかを確認します。

計算式:

不足予告日数 = 30日 − 実際に予告された日数

パターン別の日数:

状況 不足予告日数 請求できる金額
当日(即日)解雇 30日 平均賃金 × 30日分
10日前に解雇予告 20日 平均賃金 × 20日分
20日前に解雇予告 10日 平均賃金 × 10日分
30日以上前に予告 0日 請求不可

ステップ3:予告手当の総額を計算する

最終計算式:

予告手当の総額 = 1日分の平均賃金 × 不足予告日数

先ほどの具体例(即日解雇の場合):

予告手当 = 8,152円 × 30日 = 245,560円

チェックポイント: この金額は月給の単純な1か月分(250,000円)より少ない場合があります。残業代や固定手当が含まれる場合は逆に多くなることもあるため、必ず計算してください。


証拠収集と準備:請求前にやるべきこと

請求を成功させるために、解雇命令を受けた当日から3日以内に以下を実行してください。

今すぐ集める証拠リスト

□ 解雇通知書(書面)のコピー・写真撮影
□ 解雇を告げられた会話の録音(スマートフォン可)
□ 解雇に関するメール・LINE・チャットのスクリーンショット
□ 直近3か月分の給与明細(全ページ)
□ 雇用契約書または労働条件通知書
□ 就業規則(コピーが手元になければ請求する権利あり)
□ タイムカード・出勤記録のコピー
□ 解雇日・解雇理由を記録したメモ(日時・場所・立会人含む)

口頭解雇の場合: 書面がなくても請求は可能です。解雇を告げられた日時・場所・発言内容を正確にメモし、録音があれば最善です。「解雇通知書を出してほしい」と会社に要求することも有効です。

解雇理由証明書の請求

労働基準法第22条に基づき、解雇された労働者は会社に「解雇理由証明書」の交付を請求できます。これにより解雇理由が書面で確定し、後の請求・交渉を有利に進められます。

【請求方法】
会社の人事担当者または上司に対して、
「労働基準法22条に基づき、解雇理由証明書の交付を請求します」
と口頭または書面で伝える。

※ 会社は遅滞なく交付する義務があります(拒否は法令違反)。

解雇予告手当の請求手順【4ステップ】

STEP 1:会社に口頭・メールで請求する

まず会社(人事担当・上司)に対して予告手当を請求します。

請求メールの例:

件名:解雇予告手当の請求について

〇〇株式会社 人事部 ご担当者様

○年○月○日付で即日解雇の通知を受けました○○(氏名)です。

労働基準法第20条第1項に基づき、解雇予告手当として
30日分の平均賃金(概算:○○○,○○○円)の支払いを請求いたします。

○年○月○日までに下記口座へお振込みいただけますよう、お願いいたします。

【振込先】
銀行名:〇〇銀行
支店名:〇〇支店
口座種別:普通
口座番号:〇〇〇〇〇〇〇
口座名義:〇〇 〇〇

ご対応いただけない場合は、労働基準監督署への申告および
法的手続きを検討することとなりますのでご承知おきください。

以上

STEP 2:内容証明郵便で正式請求する

会社が無視・拒否した場合は、内容証明郵便で正式な請求書を送付します。内容証明郵便は「いつ・どんな内容で請求したか」を郵便局が証明する公的記録となり、後の法的手続きで証拠になります。

※ 内容証明郵便のテンプレートは 次章(H2-5) を参照してください。


STEP 3:労働基準監督署に申告する

内容証明郵便を送付しても支払いがない場合、労働基準監督署(以下、労基署)に申告します。

【申告先】
会社の所在地を管轄する労働基準監督署
(全国の労基署一覧:厚生労働省ウェブサイトで検索可)

【申告の流れ】
1. 管轄の労基署に電話または直接来所
2. 「解雇予告手当の未払いを申告したい」と伝える
3. 申告書に必要事項を記入・提出
4. 労基署が会社に対して調査・指導を実施

【持参するもの】
□ 申告書(労基署でも用意可)
□ 解雇通知書または解雇の証拠
□ 給与明細3か月分
□ 雇用契約書
□ 内容証明郵便のコピー

労基署申告の強み: 申告は無料です。労基署は会社に対して行政指導・是正勧告を行う権限があり、違反企業には罰則(労働基準法119条・6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が適用される場合もあります。


STEP 4:少額訴訟または労働審判を活用する

労基署の指導後も支払われない場合、または迅速に解決したい場合は司法手続きを利用します。

手続き 特徴 費用目安 解決期間
少額訴訟 60万円以下の金銭請求に利用可。原則1回の審理で判決 数千円〜 1〜3か月
労働審判 労働問題専門の審判手続き。3回以内で解決を目指す 数千円〜 1〜3か月
通常訴訟 金額・争点が大きい場合 数万円〜 6か月〜

弁護士・社会保険労務士への相談: 法テラス(日本司法支援センター)では無料法律相談が利用できます。収入が一定以下の場合は弁護士費用の立替制度もあります(電話:0570-078374)。


内容証明郵便の書き方テンプレート

以下のテンプレートをそのまま使用できます(括弧内を自身の情報に置き換えてください)。

                                解雇予告手当請求書

                                          令和〇年〇月〇日

〒〇〇〇-〇〇〇〇
〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
〇〇株式会社
代表取締役 〇〇 〇〇 殿

                                〒〇〇〇-〇〇〇〇
                                〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号
                                氏名:〇〇 〇〇
                                電話:〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇

              記

1. 請求の事実
   私は、令和〇年〇月〇日、貴社から即日解雇の通告を受けました。
   同通告において、解雇予告期間は一切設けられませんでした。

2. 請求の根拠
   労働基準法第20条第1項に基づき、使用者が解雇予告を行わない場合、
   30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う義務があります。

3. 請求金額の計算
   ・過去3か月の賃金総額:金〇〇〇,〇〇〇円
   ・過去3か月の暦日数:〇〇日
   ・1日分の平均賃金:金〇〇,〇〇〇円
   ・不足予告日数:30日
   ・請求金額:金〇〇〇,〇〇〇円

4. 支払期限
   本書面到達後、10日以内(令和〇年〇月〇日まで)に下記口座へ
   お振込みいただくよう請求いたします。

   【振込先口座】
   〇〇銀行 〇〇支店 普通 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
   口座名義:〇〇 〇〇

5. 警告
   上記期日までにご対応いただけない場合は、労働基準監督署への申告
   および法的手続き(少額訴訟・労働審判等)を申し立てることと
   いたしますので、申し添えます。

                                               以上

内容証明郵便の送り方:
1. 同じ内容の書面を3部作成(会社用・郵便局保管用・自分用)
2. 最寄りの郵便局の窓口(一部ゆうゆう窓口)で「内容証明郵便で送りたい」と伝える
3. 費用:基本料金+内容証明料(440円)+書留料(430円〜)=1,000円前後
4. 「配達証明」(290円)も合わせて付けると、到達証明が取れてより確実です


請求が通らないケースと対処法

予告手当が不要な例外ケース

以下の場合は、会社が予告手当を支払わなくてよいと法律で定められています(労働基準法第20条ただし書き・第21条)。

例外ケース 条件
試用期間中の解雇 雇い入れから14日以内に限る
天災その他やむを得ない事由 労働基準監督署の認定が必要
労働者の責めに帰すべき事由 労働基準監督署の除外認定が必要
日雇い労働者 雇用後1か月以内かつ継続していない場合

重要: 「懲戒解雇だから予告手当は払わない」と言われた場合でも、労働基準監督署の除外認定を受けていない限り、支払い義務は消滅しません。「当然に除外認定される」という会社の判断は法的に正しくありません。会社が実際に除外認定を受けているか確認してください。


時効に注意:3年以内に請求する

解雇予告手当の請求権は賃金請求権として扱われます。

2020年4月1日以降の解雇分:時効3年(労働基準法第115条改正)

時効カウントの起算点 = 解雇された日(予告手当が支払われるべき日)

例:2022年6月1日に即日解雇
  → 2025年6月1日までに請求しなければ消滅

ただし、できるだけ早期に請求することを強く推奨します。時間が経つほど証拠が散逸し、会社が倒産するリスクも高まります。


FAQ:よくある質問

Q1. 口頭で「今日で辞めてくれ」と言われただけです。書面がなくても請求できますか?

A. できます。口頭解雇でも労働基準法20条の適用はあります。解雇を告げられた日時・場所・発言内容を記録し、可能であれば録音してください。また、会社に「解雇理由証明書」(労働基準法22条)の交付を請求することで、書面による証拠を作ることができます。


Q2. 「自己都合退職にしてくれれば退職金を出す」と言われました。応じるべきですか?

A. 慎重に判断してください。「自己都合退職」として処理されると、解雇予告手当の請求権が失われる可能性があるほか、雇用保険の給付制限(2〜3か月)が発生します。交渉する場合は、まず専門家(社労士・弁護士)に相談してから書類にサインすることを強く推奨します。


Q3. 懲戒解雇でも予告手当を請求できますか?

A. 原則として請求できます。会社が予告手当の支払い義務を免れるには、労働基準監督署の「除外認定」を受ける必要があります。除外認定を受けていない懲戒解雇であれば、予告手当の請求権は消滅しません。会社に除外認定を受けているか確認してください。


Q4. 会社が計算した予告手当の金額が少ないと思います。どうすればいいですか?

A. まず自分で平均賃金を計算し(本記事のステップ1〜3参照)、差額を確認してください。不足がある場合は差額を追加請求できます。計算の基礎となる給与明細・出勤記録を証拠として保管し、不足分を内容証明郵便で請求してください。


Q5. 予告手当と未払い残業代を同時に請求できますか?

A. できます。予告手当・未払い残業代・未払い給与はそれぞれ独立した請求権です。まとめて請求書に記載し、一括請求することが可能です。複数の請求が絡む場合は、労働基準監督署への申告または弁護士への相談を検討してください。


Q6. 労基署に申告したら会社に報復されませんか?

A. 労働基準法104条2項は、労働者が申告を理由とした不利益取扱いを禁止しています。申告したことを理由に解雇・降格・嫌がらせ等を行った場合、会社はさらなる法令違反を犯すことになります。すでに解雇されている場合は、申告による報復リスクはほとんどありません。


まとめ:即日解雇されたらこの順で動く

【今すぐやること・チェックリスト】

□ Step 0:解雇通知・給与明細・契約書の証拠を固める(当日〜3日以内)
□ Step 1:平均賃金を計算し、請求金額を確定する
□ Step 2:会社にメール・口頭で予告手当を請求する
□ Step 3:解決しない場合→内容証明郵便で正式請求
□ Step 4:それでも未払いなら→労働基準監督署に申告
□ Step 5:労基署指導後も未払いなら→少額訴訟・労働審判
□ 時効:解雇日から3年以内に必ず請求する

あなたには法律で守られた権利があります。 会社の「払えない」「払う必要はない」という言葉に惑わされず、証拠を確保しながら、今日から一歩ずつ行動してください。


相談先一覧

相談先 電話番号 特徴
労働基準監督署(総合労働相談コーナー) 0120-811-610 無料・匿名可
法テラス 0570-078-374 無料法律相談・弁護士費用立替
都道府県労働局・あっせん 各都道府県HP参照 無料・早期解決向き
弁護士・社会保険労務士 請求書作成・交渉代行

免責事項: 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な対応については、専門家(弁護士・社会保険労務士)または労働基準監督署にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 解雇予告手当は最後の給与とは別に請求できますか?
A. はい、別に請求できます。解雇予告手当は労働基準法20条で定められた法定給付金で、月給・時給とは別の性質です。「給与は払った」という会社の主張は法的に通りません。

Q. 不当解雇ではなく正当な理由がある解雇の場合、予告手当は請求できますか?
A. はい、請求できます。解雇予告手当の請求権は、解雇の正当性とは無関係に発生します。正当・不当を問わず、予告なし即日解雇であれば30日分の請求が可能です。

Q. 30日分給与の計算に使う「平均賃金」とは何ですか?
A. 過去3か月の賃金総額を暦日数で割った額です。月給の単純1か月分ではなく、労働基準法12条で定められた計算方法で算出する必要があります。

Q. 時給制や日給制の場合、平均賃金はどう計算しますか?
A. 過去3か月の賃金総額を実労働日数で割った額と、総額÷実労働日数×0.6の金額を比較し、高い方を採用します。

Q. 試用期間中に即日解雇された場合も予告手当を請求できますか?
A. はい、14日以上の勤務期間があれば請求できます。試用期間中であっても、解雇予告手当支払いの義務は発生します。

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