解雇予告を受けたら今月末までにやること【給与・失業保険】

解雇予告を受けたら今月末までにやること【給与・失業保険】 不当解雇

解雇予告を受けた瞬間、頭が真っ白になる人は少なくありません。「本当に辞めなければならないのか」「生活はどうなるのか」という不安が押し寄せる中で、実は今月末という期限までに動かさなければならない手続きが複数同時に存在します

給与の確保・離職票の取得・失業保険の申請——この3つは互いに連動しており、どれかひとつが遅れると残り全体が詰まります。本記事では、労働基準法や雇用保険法といった法律の根拠を明記しながら、解雇予告を受けた当日から退職日・そして給付開始までの流れを実務レベルで順を追って解説します。会社との交渉や窓口相談にそのまま活用できる内容です。


解雇予告を受けたら「今月末まで」が勝負——3つの手続きを同時進行させる理由

「不当解雇」と「解雇予告」の違いと自分のケースの確認方法

まず自分の状況を正確に分類することが、適切な対応の出発点になります。

解雇予告とは、使用者が労働者を解雇しようとするときに、少なくとも30日前に予告しなければならないという義務のことです(労働基準法第20条)。30日前に予告できない場合は、不足日数分の平均賃金を「解雇予告手当」として支払わなければなりません。つまり「今月末で解雇」と言われた場合、予告日から退職日までが30日未満であれば、解雇予告手当が発生します。

不当解雇とは、解雇そのものの正当性の問題です。労働契約法第16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。つまり会社側が「合理的な理由」と「社会通念上の相当性」の両方を証明できない解雇は、法律上無効です。

確認ポイント 該当するケース
解雇の理由を文書で示されていない 不当解雇の可能性大
予告から退職日まで30日未満 解雇予告手当の請求権あり
理由が「整理解雇」 4要件(人員削減の必要性等)の充足確認が必要
育児・介護・組合活動が理由に絡む 法律上の禁止解雇に該当する可能性あり
試用期間中の解雇 14日超勤務なら労基法20条が適用される

自分のケースがどこに当てはまるかを確認したうえで、以下の手順を進めてください。

今月末までに動かす3本柱(全体スケジュール早見表)

退職日を「X日」として逆算した場合の行動スケジュールです。

タイミング やること 対応窓口
予告を受けた当日~翌日 解雇予告書・通知の保存、給与明細・雇用保険番号の確認 自分で完結
X日-21日まで 解雇理由証明書の請求、解雇予告手当の確認・請求 会社人事部
X日-14日まで 労働基準監督署への相談(予告手当未払い・不当解雇の場合) 労基署
X日-7日まで ハローワークへの事前相談、離職票発行確約の取り付け ハローワーク
X日(退職日) 離職票・源泉徴収票・退職証明書・雇用保険被保険者証の受取確認 会社
X日+10日以内 離職票が届かない場合は会社・ハローワークへ催促 会社→ハローワーク
離職票到着後すぐ ハローワークで求職申込み+受給資格決定の手続き ハローワーク

3本柱のどれが遅れてもドミノ倒しになります。特に「離職票の到着待ち」は失業保険申請の起点なので、退職前から会社に対して発行スケジュールを確認しておくことが重要です。


給与確保——退職日までに全額もらう権利を守る

賃金全額払い原則と解雇予告手当の計算方法

給与は「最後の1円まで払ってもらう権利」があります。労働基準法第24条(賃金全額払い原則)により、使用者は賃金を全額支払わなければなりません。退職を理由に給与の一部を差し引くことは違法です。

加えて、解雇予告が30日未満の場合は解雇予告手当が別途発生します(労基法第20条)。

解雇予告手当の計算式

解雇予告手当 = 平均賃金 × 不足日数

平均賃金 = 直近3か月の賃金総額 ÷ 直近3か月の暦日数

具体例:月給25万円(3か月合計75万円)、暦日数92日の場合

平均賃金 = 750,000円 ÷ 92日 ≒ 8,152円

予告日から退職日まで20日の場合:
不足日数 = 30日 - 20日 = 10日
解雇予告手当 = 8,152円 × 10日 = 81,520円

この金額は退職日までに支払われなければなりません。支払いがない場合は労働基準監督署に申告できます。

今すぐやること:給与に関する証拠収集チェックリスト

□ 直近3か月分の給与明細をコピー(または写真撮影)
□ 雇用契約書・労働条件通知書を保管
□ タイムカード・勤怠記録のコピーまたはスクリーンショット
□ 解雇予告日(口頭の場合は記録した日付と発言内容)を書面化
□ 解雇予告通知書がある場合は原本+コピー
□ 会社の給与振込日・締め日を確認

未払い賃金がある場合、退職後2年(令和2年4月以降の賃金は3年)の消滅時効があります(労基法第115条)。退職後も請求権は残りますが、早めに動くほど交渉が有利です。

解雇理由証明書を必ず受け取る

労働基準法第22条は、労働者が「解雇理由証明書」を請求した場合、使用者は遅滞なく交付しなければならないと定めています。この書類は:

  • 不当解雇の争い(労働審判・訴訟)の基礎証拠になる
  • ハローワークで「特定受給資格者」の認定を受ける際に必要になることがある
  • 会社が「自己都合退職」と処理しようとした場合の反証資料になる

請求方法:口頭または書面で「解雇理由証明書を交付してください(労基法第22条に基づく)」と会社の人事・総務部門に伝えます。メールで請求すれば送受信記録が残るので推奨です。


離職票——最優先で確保すべき「給付への切符」

離職票とは何か・なぜ急ぐのか

離職票(正式名称:雇用保険被保険者離職票)は2枚1組の書類です。

  • 離職票-1:雇用保険被保険者証が一体になったもの
  • 離職票-2:離職理由・賃金額・被保険者期間が記載されたもの

失業保険(雇用保険の基本手当)の申請は、離職票-2が手元に届いてからでないと始められません。離職票の発行が1週間遅れれば、給付開始も1週間後ろ倒しになります。

法律上、会社は退職日翌日から10日以内にハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出する義務があり(雇用保険法施行規則第7条)、それに基づき離職票が発行されます。ただし実務では遅れることが多いため、退職前に書面または口頭で「退職日から10日以内に離職票を郵送してください」と会社に伝えておきましょう。

離職票が届かないときの対処法

退職日から2週間経っても届かない場合は、以下の順で動いてください。

ステップ1:会社の人事・総務に「離職票はいつ発行されますか?」と問い合わせ(メールが記録残るため推奨)

ステップ2:それでも届かない場合、ハローワークに直接相談します。ハローワークが会社に対して発行を促してくれます。

ステップ3:離職票がなくても「離職票交付なし」という扱いで求職申込みと受給資格の仮確認はできる場合があります。最寄りのハローワークに現状を説明して相談してください。

離職票の「離職理由欄」を必ず確認する

離職票-2には「離職理由」の欄があります。ここに記載される理由によって、失業保険の給付内容が大きく変わります。

会社が「自己都合退職」と記載してきた場合、異議申立てを行う権利があります(雇用保険法第9条の4)。離職票-2の「離職者本人の判断」欄に「異議あり」にチェックを入れ、実際の状況を記載してください。ハローワークが事実確認を行い、最終的な離職理由の判定をします。


失業保険——「特定受給資格者」として給付を最大化する

特定受給資格者になると何が変わるか

解雇(会社都合退職)の場合、特定受給資格者として認定されます。通常の自己都合退職との差は以下のとおりです。

項目 自己都合退職 特定受給資格者(解雇)
給付制限 原則2か月(3回目以降は3か月) なし
待期期間 7日間 7日間(同じ)
所定給付日数(例:30歳・被保険者期間5年) 90日 120日
給付日数延長の余地 限定的 訓練延長等あり

最も重要なのは給付制限がないことです。自己都合の場合は7日間の待期後さらに2か月待たされますが、解雇の場合は7日間の待期後すぐに給付が始まります。

基本手当日額の計算方法

受け取れる金額の目安を把握しておきましょう。

賃金日額 = 離職前6か月の賃金総額 ÷ 180日

基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率(45〜80%)
※賃金日額が低いほど給付率が高くなる(低所得者保護)

具体例:月給25万円(6か月合計150万円)の場合

賃金日額 = 1,500,000円 ÷ 180日 ≒ 8,333円

給付率 ≒ 50〜55%(賃金日額に応じて変動)
基本手当日額 ≒ 4,166〜4,583円

特定受給資格者として120日間受給した場合の総額:
4,166〜4,583円 × 120日 ≒ 499,920〜549,960円

実際の給付率は厚生労働省の「基本手当日額の計算ツール」またはハローワークの窓口で確認できます。

ハローワークでの手続き手順(申請から給付まで)

持参書類チェックリスト

□ 離職票-1・離職票-2(最重要)
□ 雇用保険被保険者証
□ マイナンバーカード(またはマイナンバー通知カード+身分証明書)
□ 写真2枚(縦3cm×横2.5cm)
□ 本人名義の普通預金通帳またはキャッシュカード
□ 印鑑(認印可)

手続きの流れ

  1. 求職申込み:ハローワークの窓口で求職票を記入して提出
  2. 受給資格の決定:離職票を提出し、担当者が受給資格・特定受給資格者の該当を確認
  3. 雇用保険受給者説明会:指定日時に出席(資料配布・支給日程説明)
  4. 待期期間(7日間):説明会翌日から7日間は給付なし
  5. 第1回認定日:ハローワークで失業の認定を受ける(求職活動実績が必要)
  6. 給付開始:認定日からおおむね5営業日以内に指定口座へ振込み

労働基準監督署・その他相談窓口への申告

労働基準監督署に申告できるケース

以下に該当する場合は、労働基準監督署への申告(または申告を予告した会社への請求)が有効な手段です。

ケース 根拠法令
解雇予告が30日未満かつ手当未払い 労基法第20条違反
退職日以降も給与が支払われない 労基法第24条違反
解雇理由証明書を交付しない 労基法第22条違反
残業代・深夜手当が未払い 労基法第37条違反

申告の手順

  1. 最寄りの労働基準監督署に電話または来所で相談
  2. 相談内容と証拠書類(給与明細・解雇通知等)を提示
  3. 「申告書」を提出(担当官が記録)
  4. 監督官が会社に対して調査・指導・勧告を行う

申告者の個人情報は会社に開示されません(労基法第105条)。

その他の相談・申告窓口

窓口 対応できること 費用
ハローワーク(公共職業安定所) 離職票確認・特定受給資格者の認定・求職支援 無料
労働基準監督署 未払い賃金・解雇予告手当・法違反の調査 無料
総合労働相談コーナー(都道府県労働局) 解雇・ハラスメント等の総合相談・あっせん 無料
法テラス(日本司法支援センター) 弁護士費用の立替・法的支援の案内 収入要件あり
弁護士(労働専門) 不当解雇の交渉・労働審判・訴訟 有料(初回相談無料の事務所も多い)
労働組合・ユニオン 団体交渉・会社への申し入れ・精神的サポート 入会費のみ(無料相談あり)

特に総合労働相談コーナーは都道府県労働局内に設置されており、無料で専門家(紛争調整委員会)によるあっせんを受けられます。弁護士費用をかける前の第一段階として最も現実的です。


退職後の社会保険切り替えも忘れずに

解雇された場合、退職日の翌日から健康保険・年金の切り替えが必要です。失業保険の手続きと並行して進めてください。

健康保険の選択肢

選択肢 手続き先 期限 ポイント
任意継続被保険者 退職前の健保組合または全国健康保険協会 退職後20日以内 最長2年間、保険料は全額自己負担
国民健康保険 市区町村の窓口 退職後14日以内(届出) 離職票提示で保険料軽減の特例あり
家族の被扶養者 家族の勤務先 できるだけ速やかに 収入要件(年130万円未満等)あり

重要:会社都合解雇の場合、国民健康保険に加入すると保険料が最大10分の3に軽減される特例があります(非自発的失業者への軽減制度)。市区町村窓口で「会社都合で離職しました」と申し出て、離職票を提示してください。

国民年金への切り替え

厚生年金を喪失した日(退職日の翌日)から14日以内に、市区町村窓口で国民年金への種別変更を届け出る必要があります。保険料の納付が難しい場合は、免除申請(全額・4分の3・半額・4分の1)または猶予申請を同時に行えます。失業を理由とした特例免除では、本人の所得ではなく前年所得が0円として扱われるため、通常より免除が認められやすくなります。


不当解雇として争う場合の追加手順

解雇の効力そのものを争いたい場合(職場復帰または和解金の獲得)は、以下の選択肢があります。

労働審判(最も現実的な選択肢)

労働審判は、地方裁判所で行われる迅速な紛争解決手続きです。

  • 申立てから原則3回以内の期日で解決(目安3〜6か月)
  • 審判員(裁判官+労働専門家2名)が調停・判断を行う
  • 弁護士なしでも申立て可能だが、実務上は弁護士への依頼を推奨
  • 不当解雇が認められた場合、バックペイ(復職までの賃金相当額)または解決金を得られる可能性あり

申立費用の目安

収入印紙代:対象額に応じ数千〜数万円
弁護士費用:着手金10〜30万円+成功報酬(回収額の15〜20%が目安)

法テラスの「民事法律扶助制度」を利用すれば、収入要件を満たす場合に弁護士費用を立替えてもらえます(後払い・分割可)。

タイムラインと時効の注意点

請求の種類 時効・期限
解雇予告手当の請求 2年(令和2年4月以降は3年)
未払い賃金の請求 2年(令和2年4月以降は3年)
不当解雇の無効確認(民事訴訟) 解雇日から早めに行動が原則(長期放置で不利になる)
労働審判の申立て 法的時効内であれば可能だが早期対応推奨

よくある質問(FAQ)

Q1. 口頭で「今月末で解雇」と言われただけです。書面がないと手続きできませんか?

書面がなくても手続きは進められます。ただし、すぐに労働基準法第22条に基づき「解雇理由証明書」の交付を会社に請求してください。口頭での解雇通知についてはメモ(日時・発言者・内容)を残し、できれば録音しておきましょう。証拠が乏しい場合でも、ハローワークや労働基準監督署に口頭で状況を説明して相談できます。

Q2. 会社が「自己都合退職にしてほしい」と言ってきました。応じるべきですか?

原則として応じてはいけません。自己都合退職にすると、失業保険に2か月の給付制限がかかり、給付日数も短くなります。解雇であれば特定受給資格者として手厚い給付を受けられるため、経済的な損失が大きくなります。もし会社が圧力をかけてくるなら、それ自体がハラスメントになり得るため、総合労働相談コーナーや弁護士に相談してください。

Q3. 退職日までの出勤を会社から免除されました。その期間の給与はもらえますか?

はい、受け取れます。使用者の指示で出勤しない場合でも、労働契約は継続していますので、退職日まで賃金全額払い原則(労基法第24条)が適用されます。「自宅待機命令期間」の賃金が支払われない場合は、労働基準監督署に申告できます。

Q4. 失業保険をもらいながら副業・アルバイトをしても大丈夫ですか?

条件付きで可能です。認定日にアルバイトの日数と収入を正直に申告すれば、一定額までは基本手当から差し引かれないか、一部調整で受け取れます。ただし申告せずに働くと「不正受給」となり、返還命令+3倍納付のペナルティが課されます(雇用保険法第10条の4)。必ずハローワークで事前に確認してください。

Q5. 離職票が届く前に生活費が尽きそうです。何か使える制度はありますか?

いくつかの選択肢があります。①緊急小口資金(社会福祉協議会):生活費の一時的な貸付制度。②生活福祉資金貸付制度:都道府県社会福祉協議会が運営する中長期の貸付。③住居確保給付金(自立相談支援機関):家賃相当額を給付(就職活動要件あり)。④生活保護:他の制度を活用しても生活維持が困難な場合。市区町村の福祉課または自立相談支援機関(生活困窮者支援窓口)に相談してください。

Q6. 解雇予告手当はいつ払われるべきですか?払ってもらえない場合はどうすればよいですか?

解雇予告手当は解雇通知と同時、または少なくとも退職日までに支払われるべきものです(労基法第20条)。退職日を過ぎても支払われない場合は、内容証明郵便で請求書を送り、それでも応じなければ労働基準監督署に「賃金未払い」として申告してください。労基署の調査を経て、支払い命令が出ることがあります。悪質な場合は使用者に罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金:労基法第119条)が科されます。


解雇予告を受けた状況は精神的に追い詰められますが、法律はあなたを守る手段を複数用意しています。一人で抱え込まず、本記事で解説した3つの手続き(給与確保・離職票取得・失業保険申請)を優先順位をつけながら同時進行で進めてください。分からないことがあったら、ハローワークや労働基準監督署の無料相談をまずは利用することが最初の一歩です


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