解雇予告中に給与を払わないと言われたときの対処法

解雇予告中に給与を払わないと言われたときの対処法 不当解雇

解雇予告期間中の給与支払いは会社の義務|威嚇されたときの証拠収集・請求手順を解説

「解雇予告期間中は給与を出さない」と会社に言われ、どうしていいかわからずこの記事にたどり着いた方へ。まず、はっきりお伝えします。会社のその発言は法律違反であり、あなたの給与請求権は消えていません。

解雇予告期間中であっても、雇用契約は継続しています。給与を受け取る権利は労働基準法によって守られており、会社側がどれだけ強く「払わない」と言っても、その発言に法的な拘束力はゼロです。むしろ、そのような発言自体が違法行為に該当する可能性があります。

この記事では、今まさに職場の脅しに直面している方のために、今日からすぐに動ける具体的な手順を証拠の残し方・給与の請求方法・労基署への申告まで、ステップごとに解説します。一人で抱え込まず、この記事を読んで一歩ずつ前に進んでください。


解雇予告期間中でも給与を受け取る権利は消えない

「解雇されるのだから給与はない」は完全な嘘

解雇予告とは、「〇月〇日付けで解雇します」と会社が労働者に事前に通知することです。これは労働基準法第20条が定める制度で、少なくとも30日前に予告しなければなりません。

ここで重要なのは、解雇予告をされた後も、実際の解雇日が来るまでは雇用契約が継続しているという点です。契約が続いている以上、労働者には給与を請求する権利が生き続けています。

給与の支払いについては、労働基準法第24条が「全額払いの原則」を定めており、賃金は全額を直接労働者に支払わなければならないと規定されています。例外が認められるのは、法令で定められた税金・社会保険料の控除や、労使協定で締結された項目のみであり、会社が一方的に「給与を払わない」と決めることは、この条文への明確な違反です。

つまり、「解雇予告期間中だから給与を出さない」という主張は、法的根拠が一切ない完全な虚偽です。

会社が使いがちな言い訳と、その法的な反論

実際の現場では、会社側はさまざまな言い訳をもって給与の不払いを正当化しようとします。代表的なパターンとその法的評価を確認しておきましょう。

会社の言い訳 法的評価
「経営が苦しいから払えない」 違法。経営難は給与不払いの正当理由にならない
「どうせ解雇されるのに請求するのはおかしい」 違法。予告期間中は雇用継続中であり給与請求権は有効
「退職届を書いたら給与を払う」 違法。給与支払いを条件にすることは条件付き支払いとして禁止
「あなたの仕事がなかったから給与は発生しない」 違法。会社が就労させなかった場合は民法第536条第2項により賃金請求権が存続する

特に「退職届を書いたら払う」という言い方は、強要罪(刑法第223条)に該当する可能性があります。給与という生活の根幹を盾にした強制は、単なる民事上の違法にとどまらず、刑事上の問題にも発展し得ます。

解雇予告手当についても確認しておく

もし「明日付けで解雇」「即日解雇」など、30日前の予告がなかった場合は、給与とは別に解雇予告手当(労働基準法第20条)が発生します。これは平均賃金の30日分に相当する金額で、会社は即時解雇を行う場合、この金額を支払う義務があります。

今あなたが受けているのが即日解雇や短期予告の場合、通常の給与請求に加えてこの解雇予告手当も請求対象になることを覚えておいてください。


威嚇への対処が成否を分ける|証拠収集の具体的な方法

なぜ証拠収集が最優先なのか

「給与を払わない」という発言は、後になって「そんなことは言っていない」「誤解だ」と会社側にひっくり返されることがあります。給与の未払いを労基署に申告したり、裁判所で争ったりする際には、あなたが証拠を持っているかどうかが結果を大きく左右します。

精神的に動揺しているときほど、まず記録を残す行動を優先してください。記録は後から作れません。

今すぐできる証拠収集の方法

1. 発言内容を文字で記録する

「給与は出さない」と言われた直後、できるだけ早く以下の情報をメモに残してください。

  • 発言のあった日時と場所
  • 発言した人の氏名・役職
  • 発言の正確な内容(できる限り一字一句)
  • その場にいた第三者の氏名

手書きのメモ帳でも構いませんが、日時が記録されるスマートフォンのメモアプリやメールの下書きなどにも残しておくと、後で「いつ書いたか」の証拠になります。

2. 音声を録音する

職場での会話は、自分が当事者として参加しているものであれば、相手の同意なく録音しても違法にはなりません(秘密録音は原則として証拠能力があります)。

スマートフォンの録音アプリを事前に起動しておく、あるいはポケットの中で録音状態にしておくだけで、有力な証拠が手に入ります。録音データは複数の場所(クラウドストレージ・別のデバイスなど)に保存し、消えないようにしてください。

3. メール・チャットで「言質を取る」

発言の後、会社の担当者(上司・人事・代表者)に対して、メールまたはビジネスチャットで以下のような確認メッセージを送ってください。

件名:解雇予告期間中の給与支払いについての確認

〇〇様

本日の面談にて、「解雇予告期間中は給与を支払わない」旨のご発言をいただきました。
この内容を正しく理解したいため、改めて書面にてご確認させてください。

なお、労働基準法第24条の全額払い原則に基づき、
予告期間中の給与は引き続き支払われるものと認識しておりますが、
いかなる理由でお支払いいただけないのか、具体的にご説明いただければ幸いです。

ご回答をお待ちしております。
〇〇(あなたの氏名)

このメールに対して会社が「払わない理由」を返信してくれれば、それ自体が証拠になります。返信がなければ「証拠の隠蔽」として申告の際に有効に活用できます。送信履歴のスクリーンショットも必ず保存してください。

4. 書面での通知を求める

「給与は出さない」という方針が会社の正式決定であるならば、それを書面(文書)で交付するよう求めてください。多くの場合、会社側は書面化を拒否しますが、「書面で出せない = 法的根拠がない」ということの証明になります。拒否されたこと自体もメモに残しましょう。

5. 給与明細・雇用契約書・就業規則を確保する

手元に以下の書類がある場合は、すぐに安全な場所に保管してください。紛失や会社による回収・廃棄を防ぐためです。

  • 雇用契約書(労働条件通知書)
  • 給与明細(過去数ヶ月分)
  • 就業規則(特に賃金・解雇に関する条文)
  • タイムカード・出勤記録のコピー
  • 解雇通知書(もし受け取っていれば)

就業規則は多くの場合、会社の共有サーバーや掲示板にあります。解雇通告後にアクセスが制限される前に、コピーや写真撮影で記録しておきましょう。


給与を取り戻すための請求手順

最初に行う「給与支払い請求書」の内容証明郵便

証拠が集まったら、まず会社に対して正式な給与支払い請求書を内容証明郵便で送付することを強くお勧めします。

内容証明郵便とは、「いつ・どんな内容の文書を・誰に送ったか」を郵便局が公的に証明してくれる郵送方法です。「請求したかどうか」についての後日の争いを防ぐ効果があります。

内容証明郵便の書き方(基本フォーマット)

給与支払い請求書

〒○○○-○○○○
○○県○○市○○ ○-○
株式会社〇〇 代表取締役 〇〇〇〇 殿

私は、貴社に○年○月○日より○○として在籍し、
○年○月○日付の解雇予告を受けた者です。

貴社は○年○月○日、「解雇予告期間中は給与を支払わない」旨を
口頭にて通告しましたが、これは労働基準法第24条(賃金全額払い原則)に
明確に違反するものです。

解雇予告期間中であっても雇用契約は継続しており、
私の給与請求権は引き続き有効です。

つきましては、○年○月分の給与(金〇〇円)を
本書面到達後7日以内にお支払いいただきますよう、正式に請求いたします。

期日までにご対応いただけない場合は、
労働基準監督署への申告ならびに法的手続きを検討することを申し添えます。

○年○月○日
〒○○○-○○○○
○○県○○市○○ ○-○
○○○○(氏名)
電話:○○○-○○○○-○○○○

内容証明郵便は郵便局の窓口に持参するか、「e内容証明」(日本郵便の公式サービス)を使ってオンラインでも送れます。送付費用は1,000〜2,000円程度です。

労働基準監督署への申告(最も即効性のある公的手段)

会社が内容証明郵便に応答しない、または「それでも払わない」と言い張る場合は、労働基準監督署(労基署)への申告が最も効果的な次の手段です。

労基署への申告の流れ

  1. 管轄の労基署を確認する 
    職場の所在地を管轄する労基署に相談・申告します。厚生労働省のウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp)で検索可能です。

  2. 相談窓口に電話または来所する 
    最初は予約なしで「相談」として訪問してもOKです。電話相談窓口「労働基準相談ホットライン(0120-811-610)」も利用できます。

  3. 申告書を提出する 
    「申告」として正式に受理してもらうと、労基署が会社に対して調査・是正勧告を行います。申告書は窓口でもらえますが、以下の情報を事前にまとめておくと手続きがスムーズです。

  4. 会社の名称・住所・代表者名
  5. 未払い給与の金額と対象期間
  6. 会社から「払わない」と言われた日時・状況
  7. 収集済みの証拠(録音・メール等)の概要

  8. 是正勧告→支払い命令へ 
    労基署が調査を行い、違反が認められると会社に是正勧告が出されます。これに従わない場合、検察への書類送検、さらには刑事罰(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金:労働基準法第120条)に発展する可能性があります。

労基署申告の強み:費用がかからず、公的な強制力がある

弁護士に依頼するよりも費用がかからず、国の機関による調査という心理的プレッシャーを会社に与えられます。多くのケースでは、労基署からの調査通知が来た段階で会社が支払いに応じます。

遅延損害金も請求できる

給与の支払いが遅延した場合、労働者は年14.6%の遅延損害金(退職後の未払いには賃金の支払の確保等に関する法律第6条が適用)を請求できます。在籍中は民法の法定利率(年3%)が適用されます。「どうせ裁判しても時間がかかる」と思っているかもしれませんが、遅延が長くなるほど会社が支払うべき金額は増えていきます。

その他の法的手段

労基署申告に加えて、状況に応じて以下の手段も活用できます。

手段 特徴 費用・期間の目安
労働審判 裁判所が3回以内の期日で解決を図る迅速な制度 申立費用1〜2万円程度、期間3ヶ月前後
少額訴訟 60万円以下の場合、1回の期日で解決する簡易な裁判 申立費用数千円程度、期間1日〜数ヶ月
弁護士への依頼 証拠収集・交渉・裁判まで一括して対応可能 着手金数万〜十数万円、成功報酬あり
法テラス(日本司法支援センター) 収入が少ない場合に弁護士費用の立替制度あり 審査あり、利用要件を確認
未払い賃金立替払い制度 会社が倒産した場合に国が賃金を立替払い 退職後6ヶ月以内の申請が必要

相談先と支援制度の一覧

一人で抱え込まず、以下の公的窓口や支援機関に積極的に相談してください。

公的機関(無料)

労働基準監督署
– 所在地:職場所在地の管轄署へ
– 対応:給与未払い・労基法違反の申告・是正勧告
– 電話:各署(厚労省ウェブサイトで検索)

労働局の「総合労働相談コーナー」
– 所在地:各都道府県労働局内
– 対応:個別労働紛争解決援助・あっせん
– 電話:各都道府県労働局

労働基準相談ホットライン
– 電話:0120-811-610(平日17〜22時、土日祝10〜17時)
– 対応:労働基準法に関する相談

法テラス(日本司法支援センター)
– 電話:0570-078374(平日9〜21時、土曜9〜17時)
– 対応:弁護士費用の立替、法律相談の案内

都道府県の労働相談窓口
– 各都道府県が独自に設置している無料相談窓口
– 対応:労働問題全般

労働組合・ユニオン

個人でも加入できる「合同労組(ユニオン)」は、会社との団体交渉を代行してくれます。加入して交渉を委任すると、会社には「団体交渉に誠実に応じる義務(労働組合法第7条)」が生じます。地域のユニオンは「全国ユニオン」「連合(日本労働組合総連合会)」のウェブサイトで検索できます。


給与請求権の時効と動くべきタイミング

給与請求権の消滅時効は、2020年の労働基準法改正により3年に延長されました(労働基準法第115条、経過措置として当面は3年)。ただし、時効は給与の支払日の翌日から進行し始めるため、「まだ時間がある」と放置することは危険です。

また、会社が倒産した場合に利用できる未払い賃金立替払い制度は、退職後6ヶ月以内の申請が必要です。会社の経営状態が悪化しているなら、早めの行動が制度利用の可否を左右します。

今すぐ動くべき理由

  • 証拠は時間が経つほど消える(録音データ・メール・書類など)
  • 会社側が証拠を隠蔽・廃棄するリスクがある
  • 労基署の調査は申告から早ければ数週間で動き始める
  • 内容証明を送ることで会社への心理的プレッシャーが発生する

不当解雇そのものへの対応も忘れずに

この記事は給与請求権の保護に焦点を当てていますが、解雇そのものが「不当解雇」である可能性も見落とさないでください。

労働契約法第16条は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない解雇は無効」と定めています。解雇が有効かどうかについても、証拠が集まった段階で弁護士や労働組合に相談し、解雇の撤回や地位確認を求めることを検討してください。解雇が無効となれば、予告期間以降の給与(バックペイ)についても会社に請求できます。


よくある質問

Q1. 「給与は払わない」と言われましたが、まだ実際には引き落とし日が来ていません。今のうちにできることは?

A. 今すぐ証拠を集めることが最優先です。発言内容のメモ・録音・メールでの確認送信を行ってください。引き落とし日(支払日)を過ぎて実際に振り込まれなかった段階で、正式な未払いとして労基署申告が行いやすくなります。しかし、事前の証拠収集はその後の手続きの精度を大幅に高めます。

Q2. 証拠が録音だけでも労基署に申告できますか?

A. はい、できます。録音は有力な証拠として活用されます。加えてメモや送信済みメールなど複数の証拠を組み合わせることで、申告の説得力が増します。

Q3. 会社が「自己都合退職にする」と言ってきました。応じてはいけませんか?

A. 慎重に対応してください。自己都合退職にすると、失業保険の給付制限期間(2ヶ月)が生じるなど、あなたに不利な結果をもたらします。会社が「退職届に署名しなければ給与を払わない」と言っているなら、それは強迫(民法第96条)または強要罪(刑法第223条)に当たり得ます。自己都合退職への切り替えは、弁護士や労働組合に相談した上で判断してください。

Q4. 会社が倒産しそうです。給与は取り戻せますか?

A. 会社が倒産した場合でも、未払い賃金立替払い制度(独立行政法人労働者健康安全機構が運営)を利用することで、未払い賃金の一定割合(最大80%)を国が立替払いしてくれます。ただし退職後6ヶ月以内の申請が必要です。会社の経営危機が見えている場合は、今すぐ労基署や法テラスに相談してください。

Q5. 弁護士に依頼するお金がありません。どうすればいいですか?

A. 費用の心配がある場合は法テラス(0570-078374)に相談してください。収入・資産が一定以下の方には弁護士費用の立替制度(審査あり)があります。また、労基署への申告や総合労働相談コーナーの利用は完全無料です。まずお金がかからない手段から始め、状況に応じて弁護士依頼を検討するという順序で進めることをお勧めします。


まとめ|あなたの給与は必ず守れる

「解雇予告期間中は給与を払わない」という会社の発言は、労働基準法第24条に反する完全な違法行為であり、その発言にあなたの給与請求権を消滅させる力はありません。

今あなたがすべきことは、シンプルに次の3ステップです。

  1. 証拠を集める(録音・メモ・メール送信)
  2. 内容証明郵便で給与支払いを請求する
  3. 労働基準監督署に申告する

一人で抱え込まず、本記事で紹介した相談窓口(労基署・法テラス・ユニオン)を積極的に活用してください。公的機関の多くは無料で利用でき、あなたの側に立って動いてくれます。

給与請求権の消滅時効は3年ですが、証拠や制度の活用期限はもっと短いケースがあります。今日読んだ内容を元に、まず一つ行動を起こしてください。あなたの権利は、法律によって確実に守られています。

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