勇気を出して告発したのに、相手から「あれは合意だった」と言い張られ、職場の人間関係まで壊されていませんか?
信じてもらえない、孤立していく、自分が悪かったのかとさえ思えてくる——そんな二重の苦しみを今まさに感じているなら、この記事はあなたのために書きました。
この記事では、セクハラ告発後に「同意だった」という虚偽主張をされた際に必要な4つの対応をまとめて解説します。
- 証拠の補強方法:「同意ではなかった」ことを客観的に示す手段
- 法的反論の手順:虚偽主張・名誉毀損への具体的な対抗策
- 孤立・二次被害への心理的支援:正しい相談先と自分を守り方
- 弁護士・労働局への相談フロー:費用感と動き方の実務
一人で抱え込まないでください。「同意だった」という虚偽主張は、法的に反論できます。あなたには、正しい対応をすれば状況を打開できる手段が必ずあります。
「同意だった」虚偽主張がなぜ違法になるのか
セクハラそのものの法的位置づけ
セクシャルハラスメントは日本の法律で明確に禁止されています。職場におけるセクハラの法的根拠を整理すると、以下の通りです。
| 法令 | 内容 | 該当場面 |
|---|---|---|
| 男女雇用機会均等法11条 | 使用者は職場のセクハラ防止措置を義務づけられる | 職場における性的言動全般 |
| 民法709条(不法行為) | 故意または過失による損害賠償責任 | 被害者の損害賠償請求 |
| 刑法176〜178条 | 強制わいせつ・不同意わいせつ・性的暴行 | 刑事事件として立件する場合 |
| パワハラ防止法(労働施策総合推進法30条の2) | 上司が権限を使ったハラスメントへの複合規制 | 上司・管理職が加害者の場合 |
重要なのは、職場内の地位や権力関係がある場合、形式的に「同意」があったとしても、それは真の同意とはみなされない可能性が法律上も認められていることです。
「同意だった」主張が法的に崩れる4つの理由
加害者が「あれは同意だった」と言い張っても、以下の観点から法的に反論できます。
① 権力関係が存在した場合、形式的同意は無効になりうる
上司と部下、取引先と担当者など、明確な力関係がある状況では、部下が「断れなかった」「逆らえなかった」と感じて受け入れた行為は、強制性と同視されます。過去の裁判例においても、上司からの性的要求に対して部下が拒絶できなかった事例で、同意の有効性が否定されています。
② セクハラ環境下での「同意」は真の同意ではない
日常的なハラスメント、脅し、脅迫に近い言動がある職場環境では、被害者が「嫌だが断れない」状況に追い込まれます。このような環境下で示された外見上の承諾は、自由意思に基づく同意ではないとされます。
③ 告発後に「同意だった」と言い張る行為は名誉毀損になりうる
被害者が告発した後で、加害者が「あれは合意だった」「被害者も求めていた」などと第三者(同僚・会社・メディア等)に対して事実に反する発言をした場合、これは名誉毀損(刑法230条・民法709条)に該当しうる行為です。特に職場内で広めた場合は、被害者の社会的評価を不当に低下させる違法行為となります。
④ 被害者を孤立させる工作は報復行為として別途違法
加害者や周囲の者が被害者を職場で孤立させる行動をとった場合、男女雇用機会均等法11条2項が定める報復行為の禁止規定に違反します。会社がこれを放置した場合、会社自体も使用者責任(民法715条)を問われます。
今すぐ始める証拠補強の具体的手順
告発直後〜1週間以内にすべきこと
時間が経つほど証拠は失われます。被害を申告した直後であっても、今からでも取れる行動があります。
【Step 1】医療機関・カウンセリングに今日行く
セクハラによる精神的ダメージは、医師やカウンセラーに「セクハラが原因の不調です」と記録してもらうことで、重要な証拠になります。具体的には次のものを取得・保存してください。
- 診断書(抑うつ状態・適応障害・PTSDなど)
- カウンセリング初回記録(いつ・何が原因で通い始めたかが分かるもの)
- 医師への説明メモ(「○月○日に上司から△△された」という内容を伝えた記録)
医師に「職場でのセクハラが原因です」と明示して記録してもらうことが重要です。
【Step 2】デジタル記録をすべてスクリーンショットして保存
以下のものを端末から取り出し、クラウドやUSBにバックアップしてください。
- LINEやSNSのメッセージ(性的な発言・要求・圧力を示すもの)
- メール(業務メールに紛れた性的発言・呼び出し等)
- 写真・動画(もし存在する場合)
- 社内チャットのログ(Slack・Teams等)
スクリーンショットには日付が分かるよう、端末の時計が写り込むよう工夫するか、保存したファイル名に日付を入れてください。
【Step 3】詳細な被害記録ノートをつける
記憶が鮮明なうちに、以下の形式で書き留めてください。紙でもデジタルでも構いませんが、日付と時刻を必ず入れること。
【記録例】
日時:202X年○月○日(月)午後3時15分ごろ
場所:第2会議室(2人きり)
行為:上司の田中○○が私の肩に手を置き「今夜つき合えよ」と言った
私の反応:「結構です」と断ったが「つれないな、出世に関係するぞ」と言われた
目撃者:なし(ただし直後に同僚の鈴木に様子がおかしいと声をかけられた)
心身への影響:その後気分が悪くなり、午後の会議を欠席した
このノートは訴訟になった際の「被害者の一貫した訴え」を示す重要な証拠になります。
告発後に補強すべき証拠
告発後、加害者が「同意だった」と言い始めた場合には、追加で以下の証拠を収集してください。
① 「同意していなかった」ことを示す状況証拠
| 証拠の種類 | 具体例 | 取得方法 |
|---|---|---|
| 拒否・困惑を示すメッセージ | 「やめてください」「困っています」などの発言記録 | LINEや社内チャットを保存 |
| 被害直後の言動記録 | 欠勤記録・体調不良の業務メール | 会社の勤怠システムや自分のメール |
| 第三者への相談記録 | 友人・家族・相談窓口に打ち明けた日時と内容 | LINEやメールの記録 |
| 精神的ダメージの継続 | 通院記録・服薬記録・カウンセリング記録 | 医療機関に依頼 |
② 権力関係を示す証拠
加害者がいかに自分より立場が上であったかを示す証拠も重要です。
- 組織図・人事情報(上司・部下関係を示す書類)
- 過去の業務上の指示・評価に関するメール
- 「断ったら不利益になる」と示唆する発言記録
③ 加害者の虚偽主張そのものを記録する
加害者が「同意だった」と言い張っている事実そのものも証拠になります。
- 加害者が同僚に「あれは合意だった」と話している内容を聞いた場合、その証言者を確保する
- 加害者があなたに直接「同意だったろう」などと言ってきた場合、録音する(ICレコーダー・スマートフォン)
- 会社・人事部への報告メールや面談記録をコピーして手元に保管
録音について:自分が当事者として参加している会話の録音は、日本では違法ではありません(他人同士の会話の盗聴は別)。ただし録音した内容は適切な形で証拠として提出する必要があるため、弁護士に相談のうえで活用してください。
名誉毀損・報復行為への法的対抗手順
名誉毀損で加害者を追及する手順
加害者が「同意だった」「被害者が誘った」などと虚偽の事実を第三者に流布した場合、これは刑法230条の名誉毀損罪、または民法709条の不法行為(名誉毀損)として追及できます。
刑事的対応:警察への被害届
- 証拠(加害者の虚偽発言の記録・証言)を整理する
- 最寄りの警察署の相談窓口に持参する
- 刑事告訴状を作成して提出する(弁護士のサポートを推奨)
名誉毀損罪の法定刑は「3年以下の懲役・禁錮、または50万円以下の罰金」です。
民事的対応:損害賠償請求
名誉毀損による精神的苦痛に対して、損害賠償(慰謝料)を民事訴訟または内容証明郵便による請求で求めることができます。弁護士を通じて請求するのが一般的です。
会社が動かない・隠蔽する場合の対抗策
会社が「双方の言い分がある」として調査を打ち切ったり、被害者を不当に異動させたりした場合、以下の手段で会社の義務違反を追及できます。
男女雇用機会均等法に基づく会社の義務
男女雇用機会均等法11条は、会社に対してセクハラの防止措置と、被害者が申し出た後の調査・適切な対処を義務づけています。会社がこれを怠った場合、厚生労働省の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に申告できます。
申告先と手順
- 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)
- 行政指導・調停を申請できる
-
費用無料、書類1枚から始められる
-
労働審判・民事訴訟
- 会社・加害者への損害賠償請求
-
弁護士に依頼して申し立て
-
都道府県労働委員会
- 不当な配置転換・降格への対抗
心理的支援:孤立の中で自分を守る方法
「同意だった」虚偽主張が被害者に与える心理的ダメージ
加害者の虚偽主張は、セクハラ被害そのもの以上に深刻なダメージを与えることがあります。「自分の認識が正しいのか」「おかしいのは自分か」という自己不信、周囲からの無理解・孤立による無力感、「信じてもらえなかった」という絶望——これらは二次被害として知られる深刻な心理的傷つきです。
このような状態に陥っている場合、次のことを今すぐ覚えてください。
あなたの認識は正しい。加害者の虚偽主張は、あなたをさらに傷つけるための行為であり、あなたの落ち度ではありません。
今すぐ連絡できる心理的支援機関
| 機関名 | 連絡先 | 特徴 |
|---|---|---|
| よりそいホットライン | 0120-279-338(24時間) | 無料・匿名・性暴力被害専用ダイヤルあり |
| 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター | 「#8891」(全国共通) | 無料・医療・法的支援をワンストップで提供 |
| 配偶者暴力相談支援センター | 各都道府県に設置 | DVとセクハラが複合している場合に対応 |
| EAP(従業員支援プログラム) | 会社が契約している場合 | 守秘義務があるカウンセラーに相談可 |
職場で孤立したときに取るべき行動
職場の同僚が加害者側につき、自分が悪者扱いされている状況では、以下の行動が有効です。
1. 職場内で一人でも「話を聞いてくれる人」を確保する
全員が敵になることはほぼありません。直接利害関係のない別部署の同僚、産業医、社内の相談窓口担当者など、中立的な立場の人を探してください。
2. 社外の支援ネットワークを作る
職場の人間関係だけが世界ではありません。弁護士、労働組合(社外ユニオン)、支援団体などの社外ネットワークに繋がることで、孤立の感覚は大きく和らぎます。
3. 「自分を証明しなければならない」という義務感を手放す
被害者があらゆる人に自分の正当性を証明して回る必要はありません。証明するのは法的手続きの場で行うことです。日常の職場で加害者側の人間に対して「私は被害者だ」と訴え続けることは、精神的消耗につながるだけです。
弁護士への相談:費用・タイミング・選び方
弁護士に相談すべきタイミング
次のいずれかに当てはまる場合、できるだけ早く弁護士に相談することを強くお勧めします。
- 加害者が「同意だった」と会社・同僚に広めている
- 会社が加害者側に立って被害者を異動させた・降格させた
- 加害者または会社から、告発を撤回するよう圧力をかけられている
- 逆に加害者から名誉毀損や虚偽告発として訴訟を起こされた(または示唆された)
- 損害賠償請求を検討している
相談先と費用の目安
| 相談先 | 費用 | 特徴 |
|---|---|---|
| 法テラス(日本司法支援センター) | 無料〜(収入要件あり) | 収入が低い場合は弁護士費用の立替制度あり |
| 弁護士会の無料相談 | 無料(30分) | 各都道府県弁護士会で実施 |
| 労働問題専門弁護士(私選) | 初回相談無料〜1万円程度 | セクハラ・労働問題専門の弁護士を選ぶ |
| 成功報酬型弁護士 | 勝訴時に報酬支払い | 費用が用意できない場合に有効 |
法テラスの電話番号:0570-078374(平日9:00〜21:00、土曜9:00〜17:00)
弁護士を選ぶときのチェックポイント
- セクハラ・労働問題の解決実績がある弁護士を選ぶ
- 初回相談で「証拠として使えるもの」「これからの手順」を具体的に説明してくれるか確認する
- 費用体系(着手金・成功報酬・時間課金)を初回に明確にしてもらう
- 女性被害者の場合、女性弁護士を希望できることが多い(遠慮なく希望を伝える)
加害者から「逆訴訟」された場合の対応
「名誉毀損で訴える」という脅しへの対処
告発後に加害者側が「虚偽の告発で名誉毀損だ」と脅してくるケースがあります。これは被害者を萎縮させ、告発を撤回させるための戦術であることが多いです。
重要な法的事実:名誉毀損罪には「真実性の証明(真実相当性)」による免責規定があります(刑法230条の2)。被害者が経験した事実を誠実に申告した場合、それが名誉毀損になることは原則としてありません。
ただし、告発の内容が第三者にも公開される形になっている場合(SNSへの投稿など)は、表現の仕方に注意が必要です。弁護士に相談のうえ発信内容を確認してもらうことをお勧めします。
加害者から逆訴訟を起こされた場合
万が一、加害者が実際に民事訴訟を起こしてきた場合には、以下の対応を取ってください。
- すぐに弁護士に依頼する(一人で対応しない)
- 収集してきた証拠一式を弁護士に提出する
- セクハラ被害の事実を裁判所で主張・立証する
- 逆に、加害者のセクハラ行為について反訴することを弁護士と検討する
逆訴訟は、証拠をしっかり持っている被害者にとっては、かえって加害者の行為を裁判所に認定させる機会にもなりえます。
都道府県労働局への申告手順
申告の流れ(具体的ステップ)
労働局への申告は無料で、弁護士なしでも行えます。以下の流れで進めてください。
Step 1:お近くの都道府県労働局雇用環境・均等部(室)を調べる
厚生労働省のウェブサイト(mhlw.go.jp)から全国の窓口一覧を確認できます。
Step 2:相談の予約を入れる
電話またはウェブで予約。「セクハラの被害を受けており、会社の対応が不十分だと感じている」と伝えれば担当部署に案内されます。
Step 3:相談時に持参するもの
- 被害の概要を時系列でまとめたメモ(A4・1〜2枚程度)
- 証拠(メール・LINEのプリントアウト・日記記録のコピー)
- 診断書(あれば)
- 会社への申告記録(あれば)
Step 4:行政指導または調停の申請
相談を経て、労働局は会社に対する行政指導や、第三者を交えた「調停」を実施することができます。調停は費用無料で、弁護士なしでも参加できます。
今日からあなたが取るべき行動チェックリスト
状況が複雑に見えても、やるべきことは順番があります。以下の優先順位に従って、今から動き始めてください。
今日できること
- [ ] 被害の詳細を時系列でメモに書き出す
- [ ] LINEやメールの証拠をスクリーンショットして保存する
- [ ] 信頼できる人(家族・友人)に状況を話して記録を残す
今週中にすること
- [ ] 医療機関・カウンセリングを受診して診断書を取得する
- [ ] 法テラスまたは弁護士会の無料相談に申し込む
- [ ] 支援ホットライン(#8891・よりそいホットライン)に電話してみる
状況に応じて進めること
- [ ] 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談・申告する
- [ ] 弁護士に依頼して損害賠償請求または名誉毀損での刑事告訴を検討する
- [ ] 会社が改善しない場合、労働審判・民事訴訟を検討する
よくある質問
Q1. 証拠がほとんどない状態で告発してしまいました。今から証拠を集めることはできますか?
告発後でも証拠収集は可能です。むしろ告発後に加害者が「同意だった」と言い始めた発言そのものが新たな証拠になります。加害者の発言を録音する、第三者の証言を取る、医療機関で診断書を取得するなど、今から着手できることはたくさんあります。弁護士に相談すれば、どのような証拠が有効かを具体的にアドバイスしてもらえます。
Q2. 会社の人事部に相談したら加害者側の言い分を信じられてしまいました。次の手はありますか?
会社内の解決が難しい場合、外部機関への申告が有効です。都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に申告すれば、会社に対して行政指導が行われます。また、弁護士を通じて会社および加害者に損害賠償請求を行うことで、会社が動かざるを得ない状況を作ることもできます。
Q3. 「同意だった」と言われているが、実際に当時の自分は明示的に断れなかったことが不安です。断れなかった=同意したことになりますか?
なりません。断れない状況に追い込んだこと自体が、セクハラの問題の一部です。権力関係・雇用への不安・脅迫的言動があった場合、「断れなかった」という事実はむしろ強制性の証明になります。自分を責める必要はありません。
Q4. 加害者に「名誉毀損で訴える」と言われ、告発を取り下げることを考えています。どうすればいいですか?
告発を取り下げる前に、必ず弁護士に相談してください。被害の事実を誠実に申告する行為は、名誉毀損にはなりません(刑法230条の2)。加害者の「名誉毀損で訴える」という発言は、多くの場合、告発を萎縮させるための脅しです。証拠が揃っている場合は、むしろ取り下げないことが有利に働きます。
Q5. 弁護士費用が心配で相談に踏み切れません。費用がなくても相談できますか?
費用が不安な場合は、法テラス(0570-078374)に相談してください。収入基準を満たす場合、弁護士費用の立替制度が利用できます。また、多くの弁護士会では初回30分の無料相談を実施しており、成功報酬型で受任してくれる弁護士も少なくありません。まずは無料相談から始めることをお勧めします。
免責事項:この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。具体的な状況への対応については、弁護士または専門機関に直接相談してください。



