配置転換拒否で給与未払い脅迫|対応手順と申告先【2025年版】

配置転換拒否で給与未払い脅迫|対応手順と申告先【2025年版】 不当解雇

「配置転換に応じなければ、来月から給与は払わない」

もしあなたが上司や会社からこのような言葉をかけられたなら、今すぐこの記事を読み進めてください。これは明確な違法行為です。 あなたには給与を受け取る権利があり、会社には給与を支払う法的義務があります。脅しに屈する必要はありません。

この記事では、今まさに脅迫を受けている方が24時間以内にできる証拠収集の方法から、労働基準監督署への申告手順、さらには警察への被害届の提出まで、実務的な対応手順を順を追って解説します。


「配置転換に応じなければ給与を払わない」は違法か?

結論から言います。違法です。

「配置転換に応じなければ給与を払わない」という会社の言動は、少なくとも以下の2つの法律に違反する可能性があります。

給与全額支払義務とは何か(労働基準法第24条)

労働基準法第24条は、給与の全額払いの原則を定めています。

労働基準法第24条(賃金の支払)
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

この条文が意味することは非常に明快です。労働者が実際に労働を提供している限り、会社は給与を支払い続ける義務を負います。 配置転換命令に従わないことは、給与の支払いを拒否する正当な理由には一切なりません。

給与の控除や不払いが許されるのは、法律に定められた税金・社会保険料の控除、または労使協定(36協定など)に基づく場合のみです。「配置転換を断ったから」という理由は、そのどちらにも該当しません。

違反した場合、会社には30万円以下の罰金(労働基準法第120条)が科される可能性があります。

配置転換の強要が強要罪になるケース(刑法第223条)

刑法第223条(強要)
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。

「給与を払わない」という告知は、財産に対して害を加える旨の脅迫に該当します。そして、この脅迫によって配置転換への同意を迫る行為は、強要罪(刑法第223条)を構成する可能性があります。

強要罪は親告罪ではないため、被害届を提出すれば警察が捜査を開始できます。また、脅迫の内容によっては恐喝罪(刑法第249条)が成立する場合もあります。

「実質的な解雇」として評価されるケース

会社が配置転換拒否を理由に給与を止める行為は、法的には「実質的な解雇(黙示の解雇)」として評価される場合があります。

正式な解雇には以下のルールが適用されます。

要件 根拠
30日前の解雇予告または30日分以上の解雇予告手当の支払い 労働基準法第20条
客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性 労働契約法第16条

これらの要件を満たさない「実質的な解雇」は不当解雇となり、労働者は地位確認と未払い給与の請求が可能です。


あなたの会社の「配置転換命令」は有効か?

重要な前提として、すべての配置転換命令が有効なわけではありません。 会社が配置転換を命じる権限(配置転換命令権)には、法律上の限界があります。

配置転換命令権の限界

最高裁判所は、配置転換命令が権利の濫用に当たる場合を以下のように示しています(東亜ペイント事件、最高裁1986年)。

  1. 業務上の必要性がない場合
  2. 不当な動機・目的がある場合(退職を促すための嫌がらせ、組合活動への報復など)
  3. 労働者に著しい不利益を与える場合(家族の介護、病気の治療、育児などへの重大な影響)

また、以下の場合には会社の配置転換命令は原則として無効です。

  • 雇用契約書や労働条件通知書に「勤務地限定」「職種限定」と明記されている
  • 採用時に口頭で勤務地や職種を限定する約束があった
  • 育児・介護休業法に基づく配慮義務を無視している(小学校就学前の子の養育、要介護者の介護中)

今すぐ確認すること: 手元にある雇用契約書・労働条件通知書を開き、勤務地・職種・業務内容の記載を確認してください。「限定」の文言があれば、あなたには配置転換を断る強力な根拠があります。


今すぐ始める証拠収集の手順

会社との争いで最も重要なのは証拠です。 脅迫を受けたその日から、以下の手順で証拠を保全してください。

発言・脅迫内容の記録方法

メール・チャットで脅迫を受けた場合

  • スクリーンショットを撮影し、日時・送信者名が確認できる状態で保存する
  • メールの場合はPDFとして書き出しし、印刷もしておく
  • クラウドストレージ(Googleドライブ・iCloud・OneDrive)に即日アップロードし、会社端末以外に保存する
  • メールヘッダー情報(送信元IPアドレス等)も保存しておくと後の証拠能力が高まる

口頭・電話で脅迫を受けた場合

  • スマートフォンのボイスレコーダー機能で録音する
  • 自分の発言は録音できますが、相手の発言を記録するために会話全体を録音することは、日本では当事者録音として適法です(一方当事者が録音する場合)
  • 録音の前に「記録のために録音させてください」と告げる必要はありませんが、告げた上で録音すると証拠としての信頼性が増します
  • 録音ができなかった場合は、会話終了後すぐに詳細メモを作成する

被害状況メモの書き方(テンプレート)

【被害記録メモ】

日時:○年○月○日(○曜日)○時○分〜○時○分
場所:○○会議室 / 電話 / オンライン会議
脅迫者の氏名・役職:○○部長 ○○ ○○
立会者(いた場合):○○さん(役職)

脅迫の具体的内容(できる限り一言一句を再現):
「(例)配置転換に応じなければ、来月分の給与は払わない。
それが嫌なら自分で辞表を書け」

自分の発言:
「(例)配置転換には応じられない旨を伝えた」

その後の状況:
「(例)○日に上司から書面は受け取っていない)

作成日時:記憶が新鮮なうちに当日中に作成

給与未払いの証拠を確保する

  • 銀行通帳・ネットバンキングの入出金履歴を印刷またはPDF保存する
  • 給与明細(紙・電子データ)を全月分保存する
  • 未払いが発生した場合は、通常入金される日と実際の入金額を比較した未払い一覧表を作成する

雇用関係を証明する書類を整理する

以下の書類を手元に揃えてください。

  • 雇用契約書(労働条件通知書)
  • 就業規則(会社から取得。開示を求める権利があります)
  • 賃金規程
  • 配置転換の命令書・辞令(存在する場合)

労働基準監督署への申告手順

証拠が揃ったら、最寄りの労働基準監督署(労基署)に申告します。労基署への申告は無料で、労働者個人でも行えます。

申告前に準備するもの

書類 用途
証拠のコピー一式(メール・録音データ・メモ) 被害内容の説明
雇用契約書・労働条件通知書 雇用関係の証明
給与明細(直近6ヶ月分) 給与額・未払い額の確認
通帳コピー(未払い確認用) 入金状況の証明
被害状況をまとめたメモ(A4・2枚程度) 説明の効率化

申告窓口と申告内容

申告先: 会社の所在地を管轄する労働基準監督署
(厚生労働省ウェブサイト「労働基準監督署の所在案内」で検索可能)

申告内容: 以下の2点を明確に伝えてください。

  1. 労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)違反 ―― 配置転換拒否を理由に給与を支払わないと告知されたこと、または実際に支払われなかったこと
  2. 労働基準法第20条違反(解雇予告義務違反) ―― 実質的な解雇にもかかわらず、解雇予告も解雇予告手当も支払われていない場合

申告後の流れ

申告受理
  ↓
労基署による会社への調査・是正勧告
  ↓
会社が是正しない場合 → 検察への送検(司法処分)
  ↓
未払い賃金の立替払制度(会社が倒産・支払い不能の場合)

ポイント: 労基署は刑事機関です。申告を受けると、会社に対して立入調査と是正勧告を行う権限を持っています。「相談」ではなく「申告(告訴)」として手続きすることを明確に伝えてください。


警察への被害届提出手順

給与不払いによる脅迫が強要罪(刑法第223条)に該当すると判断した場合、警察への被害届提出も有効な選択肢です。

被害届を提出するタイミング

  • 「給与を払わない」という脅迫の証拠(録音・メール等)が確保できた時点
  • 実際に給与が不払いになった時点
  • 労基署の対応だけでは解決が見込めない場合

被害届の提出先と手順

提出先: 最寄りの警察署(生活安全課または刑事課)

手順:

  1. 警察署に電話し、「労働問題で強要罪の被害届を提出したい」と申し出る
  2. 担当者と面談日を調整する
  3. 面談当日に証拠(録音データ・メール・メモ)を持参する
  4. 担当警察官に被害内容を説明し、被害届用紙に記載・提出する

被害届に書く内容

被害届(強要罪)記載事項

1. 被害者(あなた)の氏名・住所・連絡先
2. 被害の日時・場所
3. 被疑者(会社の担当者)の氏名・役職・会社名・住所
4. 被害の内容
   (例)「配置転換に応じなければ給与を支払わないと告知され、
   配置転換への同意を強要された。具体的には……」
5. 証拠の有無と種類
6. 被害届提出の日付

注意点: 警察が被害届を受理するかどうかは、証拠の有無と被害内容の明確さにかかっています。録音データ・メールなどの客観的証拠を必ず持参してください。受理されない場合でも、「相談記録」として残してもらうよう求めることができます。


総合労働相談コーナーと無料相談窓口の活用

証拠収集や申告の前に、まず専門家に状況を相談したい場合は以下の窓口を活用してください。

主な相談窓口一覧

窓口 特徴 費用
総合労働相談コーナー(都道府県労働局内) 解雇・ハラスメント全般の相談。あっせんも可能 無料
法テラス(日本司法支援センター) TEL:0570-078374 弁護士費用の立替制度あり、無料法律相談 無料(収入要件あり)
労働組合(合同労組・ユニオン) 個人加入可能。会社との団体交渉を代行 組合費のみ
弁護士への個別相談 法的請求・労働審判・訴訟を依頼可能 初回無料の事務所多数
都道府県労働委員会 あっせん・調停制度あり 無料

法テラスの無料法律相談を利用する条件

  • 収入基準(単身者の場合、月収約18万2千円以下が目安)と資産基準を満たすこと
  • 日本国籍または適法に在留していること

収入基準を超える場合でも、多くの弁護士事務所が初回30分〜1時間の無料相談を提供しています。労働問題専門の弁護士への早期相談を強く推奨します。


配置転換を断ったあとの会社の違法な報復行為への対処

「給与を払わない」という脅迫が実行に移された場合、または他の報復行為が続く場合の対処法を整理します。

実際に給与が支払われなかった場合

即日行動:

  1. 給与入金予定日の翌日に銀行記帳または通帳確認を行い、未払いを記録する
  2. 会社に書面(内容証明郵便)で給与の支払いを催告する
  3. 催告後も支払われない場合は、労基署への申告または弁護士への依頼に進む

内容証明郵便の送付は、後の法的手続きにおいて「請求した事実」を証明するために重要です。郵便局または弁護士に依頼して送付してください。

不当解雇として争う場合

配置転換拒否を理由に解雇された(または実質的に雇用を打ち切られた)場合は、以下の手段で争えます。

手段 特徴 期間の目安
労働審判 裁判所が関与する簡易な手続き。3回以内の期日で解決を目指す 約3〜6ヶ月
民事訴訟(地位確認訴訟) 解雇の無効と未払い給与の支払いを請求 1年〜数年
労働局のあっせん 裁判外の話し合い解決。強制力はないが迅速 約1〜3ヶ月

労働審判は弁護士なしでも申立て可能ですが、書面作成の専門性が求められるため、弁護士への依頼を検討してください。成功報酬型の弁護士も多く、費用の不安がある場合は法テラスの審査を受けることをお勧めします。

パワーハラスメントとして申告する場合

「配置転換に応じなければ給与を払わない」という言動は、パワーハラスメント防止法(労働施策総合推進法第30条の2)が定める「職場のパワーハラスメント」の要件(①優越的関係を背景にした言動、②業務の適正範囲を超えている、③就業環境を害する)を満たす可能性が高いです。

申告先: 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

会社にパワハラ相談窓口が設置されている場合でも、会社内での解決が期待できないときは、直接労働局に申告することができます。


やってはいけないNG行動

感情的になりやすい状況だからこそ、以下の行動は避けてください。

  • ✗ 感情的な言動を記録に残す:「絶対許さない」「訴えてやる」などの発言はSNSや社内チャットに書かない。後に不利な証拠になりうる
  • ✗ 脅迫に応じて配置転換に同意する:一度同意すると「自発的に同意した」と評価される可能性がある
  • ✗ 会社の言葉を信じて証拠を捨てる:「解決した」と言われても証拠は保持し続ける
  • ✗ 一人で抱え込む:複数の相談窓口に並行して相談することは問題ありません
  • ✗ 会社支給端末のみに証拠を保存する:端末を没収・初期化されると証拠が失われる。必ず個人のクラウドや端末にバックアップする

対応の全体フロー(チェックリスト)

STEP 1:証拠保全(今すぐ)
  □ 脅迫内容のスクリーンショット・録音・メモ作成
  □ 雇用契約書・給与明細・通帳コピーを準備
  □ 証拠をクラウドと個人端末に保存

STEP 2:状況整理(当日〜翌日)
  □ 雇用契約書で勤務地・職種限定の記載を確認
  □ 被害状況メモを日時・発言内容を含めて作成
  □ 未払い額の計算

STEP 3:相談(2〜3日以内)
  □ 総合労働相談コーナーまたは弁護士に相談
  □ 合同労組への加入を検討

STEP 4:申告(相談後、速やかに)
  □ 労働基準監督署に申告(給与不払い・不当解雇)
  □ 強要罪の証拠が揃えば警察署に被害届提出
  □ 労働局にパワハラ申告

STEP 5:法的手続き(必要に応じて)
  □ 労働審判の申立て
  □ 弁護士による未払い給与・損害賠償請求

よくある質問

Q1. 配置転換に応じないことで解雇された場合、解雇は有効ですか?

配置転換命令が有効であり、かつ正当な理由なく繰り返し拒否した場合は解雇が有効とされることもあります。ただし、①配置転換命令自体が権利の濫用である、②雇用契約書に勤務地・職種限定の記載がある、③不当な動機(退職強要・組合弱体化など)がある、という場合には解雇は無効です。まず弁護士に相談して、配置転換命令の有効性を評価してもらうことを強くお勧めします。

Q2. 録音は証拠として使えますか?

会話の当事者自身が録音する場合(一方当事者録音)は、日本の裁判実務において証拠能力が認められています。 会話に参加していない第三者が無断で録音する場合とは異なります。スマートフォンのボイスメモアプリ等で録音した音声は、労基署・警察・裁判所いずれの手続きでも証拠として提出できます。

Q3. 会社から「自己都合退職届を書け」と言われています。書いてはいけませんか?

絶対に書かないでください。 自己都合退職届を提出すると、「自分の意思で退職した」と評価され、不当解雇の主張ができなくなります。また、失業給付の受給において「会社都合退職」よりも不利な扱い(待機期間が長い、給付期間が短い)を受けます。退職届の提出を強要することも強要罪の問題になりえます。

Q4. 労基署に申告しても会社が無視した場合はどうなりますか?

労基署の是正勧告に従わない会社に対しては、労基署から検察庁に送検(司法処分)されます。送検は会社にとって重大なリスクであり、多くの場合は是正勧告の段階で対応します。それでも解決しない場合は、弁護士を通じた労働審判・民事訴訟に移行してください。

Q5. 今月の給与が振り込まれませんでした。何日以内に行動すべきですか?

給与未払いが確認できたその日から行動してください。 未払い賃金請求権の消滅時効は3年(2020年4月改正後の労働基準法第115条)ですが、証拠の鮮度と解決の速さのために早期行動が有効です。まず会社に書面で支払いを催告し、翌日から労基署への申告準備を始めてください。


まとめ:あなたには闘う手段があります

「配置転換に応じなければ給与を払わない」という会社の言動は、労働基準法・刑法・パワハラ防止法の複数の法律に違反する可能性があります。

重要なポイントを再確認します。

  • 給与は労働を提供している限り支払われなければならない(労働基準法第24条
  • 財産的損害を告知して同意を迫る行為は強要罪(刑法第223条)に該当しうる
  • 配置転換命令には法的な限界があり、すべての命令に従う義務はない
  • 証拠収集 → 労基署申告 → 必要に応じて警察・弁護士の順で対応できる
  • 無料相談窓口(総合労働相談コーナー・法テラス)を活用すれば、専門家のサポートが受けられる

一人で抱え込まず、今日中に総合労働相談コーナー(都道府県労働局内、無料)または法テラス(フリーダイヤル 0570-078374)に電話してください。あなたの権利は法律で守られています。証拠を確保し、適切な窓口に申告すれば、必ず解決の道が開けます。

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